菊川市立総合病院

tel. 0537-35-2135(代表)〒439-0022 静岡県菊川市東横地1632
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診療案内
診療日:月~金曜日の平日 受付時間:平日8:00~11:00 休診日:土・日・祝(年末年始12月29日〜1月3日)診療日:月~金曜日の平日 受付時間:平日8:00~11:00 休診日:土・日・祝(年末年始12月29日〜1月3日)
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センター(スポーツ・膝肩関節)

センター(スポーツ・膝肩関節)

月曜日午前中、木曜日午前中に膝関節・肩関節の専門外来を行います。通常の初診外来は今まで通り行っておりますが、初めから専門外来での受診希望の方は予約制となります。紹介も随時受けていますので電話か直接来院でご予約ください。

担当医師

阿部雅志(専門分野:スポーツ整形、膝関節、肩関節)
副院長、浜松医科大学臨床教授、医学博士、関節鏡技術認定医(膝)
日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会スポーツドクター、運動器リハビリテーション医、日本スポーツ整形外科学会代議員、中部日本整形外科災害外科学会評議員、東海関節鏡研究会幹事

2010~現在 藤枝MYFCチーフチームドクター
2021~2022 東海サッカー協会医事委員長
2004~2006 清水エスパルスチームドクター
2002 日韓サッカーワールドカップ静岡県医事担当

主な所属学会:日本整形外科学会、日本関節鏡.膝.スポーツ整形外科学会、日本スポーツ整形外科学会、日本肩関節学会、日本Knee Osteotomy and Joint Preservation研究会
主な研究分野:軟骨、靭帯の再生 2002年 医学博士を取得し浜松医科大学大学院卒業

担当ドクターはR5年4月から藤枝市立総合病院より当院に副院長として赴任しました。前病院ではスポーツ障害、外傷・膝関節疾患・肩関節疾患を中心に約4,000件の手術を執刀しています。

平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
膝関節手術
計320 計357 計284 計370 計320
人工関節置換術 75 71 73 76 84
高位脛骨骨切り術+膝関節鏡 75 81 95 98 85
関節鏡視下(半月板等)手術 108 152 110 147 118
膝前十字靱帯再建術(関節鏡) 44 38 49 34 28
培養軟骨細胞移植
靱帯再建、縫合、その他 12 14 11
肩関節手術
計62 計60 計55 計55 計41
肩関節鏡視下バンカート修復術
関節鏡視下腱板縫合術 40 37 32 43 30
人工骨頭、人工肩関節、その他 17 15 17

 

膝関節・肩関節疾患と治療について

膝関節
膝前十字靭帯損傷

主にスポーツで膝を捻ることで前十字靭帯の断裂がおきます。相手との接触で損傷することもありますが、ほとんどが方向転換、ストップ、ジャンプの着地で自分で膝をひねって損傷します。膝にはそのほかに後十字靭帯、内側、外側側副靭帯があり、大きな外傷が加わったときはこのような靭帯の損傷も伴い、複合靭帯損傷がおきることもあります。前十字靭帯が損傷しても通常、1ヶ月ぐらいで痛みは減り、軽く走れるため大丈夫だと思って見逃されることもあるのでスポーツで膝をひねって腫れたら前十字靭帯損傷を疑いMRIの撮影をして診断することが必要です。前十字靭帯損傷がきれて膝を何回もひねっていると半月板損傷、軟骨損傷がおき若くても変形性膝関節症になっていくこともあります。前十字靭帯は断裂したらもとのようにつなげて治すことはできないため靭帯を他の組織を使って作りなおします。
靭帯は膝蓋腱を使う方法とハムストリング腱を使う方法があります。また、前十字靭帯を1本で作る方法と2本で作る方法があり、両方の方法とも近年は骨孔をもとの前十字靭帯付着部に作製することが求められており、最近はさらに膝蓋腱を使う場合はその骨孔を長方形に作製し骨付き膝蓋靭帯を用いて再建前十字靭帯をねじれさせ3次元的にももとの前十字靭帯を再現できるようにした前十字靱帯再建術が考案され、当院ではこの方法で行っています。
術後は膝の動きの獲得は早期開始され、装具をつけての荷重は3、4日後から行います。筋力トレーニングをしながら、2ヶ月からジョギング、ランニング等が開始され、アスレチックリハビリテーションをえて6ヶ月でのスポーツ復帰を目指します。術後のリハビリテーションもとても大切になります。

膝半月板損傷

半月板は膝の内外側で軟骨と軟骨の間にあるクッションです。スポーツでの怪我では膝のひねりなどによりきれることが多く、加齢により固くなりクッション性が減ると自然にきれてきて変形性関節症になっていきます。近年注目されているのが半月板の後根損傷で半月板の後方の付着部がきれることで半月板が関節外へはみだしてしまい急激に軟骨損傷を起こし変形性変化がすすんでいきます。
半月板損傷にたいしてはできる限り縫合術が選択されます。ただし、縫合が不可能なこともありその場合は切除せざるを得ないこともあります。これらの手術は関節鏡を用いて行われます。
半月板を縫合した場合スポーツ復帰までには4から5か月かかります。

膝軟骨損傷

膝など関節には軟骨というクッションが骨を覆っており軟骨同士が接触してスムーズな関節の動きが可能となっています。軟骨には神経も血管もないため、一度壊れると自然に治らず修復再生されません。軟骨には怪我で起こる軟骨損傷と加齢によりだんだん起こる軟骨損傷があり、スポーツなど繰り返すストレスで骨と軟骨が一緒に剥がれる離断性骨軟骨炎、怪我で軟骨が削れたり剥がれたりするいわゆる軟骨損傷、加齢が関与する骨壊死や変形性膝関節症があります。

軟骨をもとに近い状態に戻すための手術治療には自家骨軟骨柱移植術と自家培養軟骨細胞移植術があります。前者は膝のあまり使っていない場所から円柱状の骨軟骨柱を採取して軟骨損傷部にモザイク状に移植する方法で3か月ほどでスポーツ復帰が可能となります。ただし、使える骨軟骨柱の数に制限があるため広範囲の修復はできません。広範囲の軟骨欠損の患者さんには自分の軟骨を採取して、培養し軟骨を作製したうえで移植するという再生医療が保険診療で行うことができ、変形性膝関節症ではない広範囲軟骨損傷には後者の自家培養軟骨細胞移植術が選択されます。
術後は2週から可動域訓練を開始し、3から4週から荷重を徐々に開始します。全荷重歩行は10週になります。現在スポーツ復帰には1年と長期を要します。

変形性膝関節症

変形性膝関節症は外傷性や加齢性に半月板が損傷し、軟骨も損傷し、削れ消失してくることで骨が刺激され骨軟骨の破壊と増殖がおこり変形してくるものをいい、レントゲン写真で骨の変形がみられます。変形性膝関節症患者は推定3000万人いるとされ、発生頻度は年齢とともに増加し、50歳以降では女性で1.5~2倍男性より頻度が高くなります。60歳代女性の40%、70歳代女性の70%にみられるとされています。膝の痛みがでたとき、その疼痛が半月板の損傷のみによるものなのか、骨軟骨にまでおよんでいる変形性変化によるものなのか診断してもらうのが治療の選択には大切です。治療には保存治療と手術治療があります。保存治療には薬の内服、リハビリテーション、足底板装着、関節注射などがありますが、ここでは手術治療について説明します。

手術方法
半月板の損傷のみが傷みの主であると判断した場合は、半月板損傷の項で説明したように関節鏡というカメラを用いて傷んだ半月板の処置をします。骨軟骨が傷んでいるいわゆる変形性膝関節症と診断した場合その程度にもよりますが、半月板の処置では疼痛は改善されません。むしろ切除した場合はその後さらに骨軟骨損傷がすすみ疼痛は悪化する可能性すらあります。 変形性膝関節症の手術には骨切り術と人工関節置換術があります。

 

骨切り術について

骨切り術にはその変形の形態と度合により種類があります。骨切り術は矯正の手術になります。体重の荷重がかかる位置を変えることで内側か外側がどちらかが悪い膝に対して内側が悪い場合はO脚を矯正し、外側が悪い場合はX脚を矯正します。代表的なものは高位脛骨骨切り術といい膝の内側の変形、つまりO脚で外側は比較的傷んでいない患者さんに行います。変形が強い患者さんには大腿骨遠位骨切りと高位脛骨骨切り術を両方行うことで矯正します。外側が悪い膝には大腿骨遠位骨切りで矯正します。適応は内外側の片方が悪く比較的変形性変化が少ない動きのいい膝になりますが、変形が強くて多少適応をはずれても年齢の若い患者さん(50代、60代)には骨きり術を選択することが多くなります。70代、80代の患者さんも適応であれば骨切り術を選択します。骨きり術時は関節鏡も同時に行います。骨切りして矯正後は専用のプレートを用いて固定をします。最近は従来の高位脛骨骨切り術の場合、矯正することで膝蓋骨の位置がさがり、膝蓋骨と大腿骨の間の関節を悪くしてしまうことが示唆され、3次元的に膝蓋骨に影響を与えない手術法が考案されて当院でもいち早く対応しその方法を用いています。術後は早期に膝を動かすためギブスなどの固定はありません。荷重は松葉杖を用い段階的に行っていきます。骨切り術は膝の動きは悪くならず、足をまっすぐに矯正でき自分の膝を温存して疼痛を改善し、また、今後の変形性変化の進行も予防できます。骨切り術で対応できない膝もありその場合は人工膝関節置換術を行います。

人工膝関節置換術について

膝が変形し、痛みと動きの制限がでている高齢の患者さんや関節リウマチの患者さんには人工膝関節置換術をおこないます。高齢で変形が強い患者さんは人工膝関節置換術を選択することが多くなります。手術は膝を縦に15㎝ほど切開して、大腿骨、脛骨とも変形した表面の骨を切除して、軟骨部分と同じ形をした人工物を挿入します。人工物には神経がありませんので人工物同士が接触しても疼痛は感じることなく歩行時痛は改善します。手術後2日目から動かしはじめ、4日目ぐらいから歩行訓練を開始します。人工関節はもともと膝の動きがいい患者さんには動きが悪くなる可能性があります。また、関節内に人工物を入れるため、術後感染を起こすと治療に難渋することがあります。手術は一般的に広く行われており、重度の変形にも対応することが可能です。

肩関節
肩腱板断裂

転倒などで肩を打撲したり、手をついたりした時など外傷性に起こる場合と日常動作や労働、スポーツによる動作の繰り返しで自然に起こる場合があります。前者の場合は原因がはっきりしており、病院を受診することで早めに診断されることが多いですが、後者の場合は原因がわからず、急に痛みが生じたり、徐々に痛みを感じるようになったりするので五十肩と思い放置したり、治療されたりすることが多くなります。腱板断裂の患者数は自覚症状のない人も含め600万人と推定され、治療をうけた患者はそのうち6万人にすぎません。断裂した腱板は自然に修復されることはなく、断裂部は時間の経過で大きくなっていくことがわかっています。腱板が断裂していると肩を水平に挙げたまま持続するのに疼痛を感じたり、力が入りにくく困難になったりすることが多いですが、他の筋肉等を使ってバランスよく肩を使えれば、疼痛も緩和し保存加療でよくなることもあります。

腱板は肩の腕の骨をとりかこむようにある肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋で構成されたインナーマッスルというバランスをとるための筋肉が腱状となったもので腕の骨についています。肩を動かしたときに腕の骨(球状)を肩甲骨の受け皿の中心にのせておくためにバランスをとって働きます(剣玉の玉を受け皿にのせたままにするためのようなものです)。これが断裂すると球状の腕の骨が受け皿の上で安定しなくなり、疼痛や肩が挙がらないなどの症状がでます。疼痛が続く場合は手術を行います。また、大きな腱板断裂は放っておくと広範囲断裂になり手術で修復することが困難になります。当院では関節鏡を用いて、1cm弱の傷を約5から6ヶ所あけて、侵襲の少ない手術を行っています。術後は5から7週間の肩の外転挙上位での固定を行い、動作が普通に行えるのに3ヶ月ほどかかります。手術では断裂が大きく、時間が経ちすぎて元に戻せないものや、腱の質が悪く再断裂を起こす(画像上は10から30%)可能性がありまが、腱板の修復ができれば疼痛は改善し、肩関節の機能も改善します。

広範囲腱板断裂および変形性肩関節症

肩腱板断裂でほとんど断裂の範囲が大きく、腱板が残っていなかったり、短縮していたりする広範囲肩腱板断裂では手が挙がらなくなったり、疼痛が強くなったりした場合、手術により腱板の修復はできないため、特殊な形態をした専用の人工肩関節置換術を行います。これはリバース型人工肩関節と呼ばれ、欧米では以前より使用実績のあり、近年日本でも手術可能となり、腱板が大きく断裂して修復ができず、手を挙げることをあきらめていた患者さんも手術によって手をあげることができるようになり、疼痛も改善するため全国的に症例数が増加しています。ただし、この手術を行うには、術者の肩関節手術件数等の資格が必要で、手術が行える病院は限られています。当院では通常の腱板断裂に対して関節鏡を用いた鏡視下腱板縫合術を行い、腱板の修復が難しい状態の患者さんにはリバース型人工肩関節置換術を行います。

反復性肩関節脱臼

肩関節はその構造上脱臼を起こしやすい関節です。生まれつき肩がゆるいことにより亜脱臼して疼痛がでる場合もありますが、それとは異なり最初はスポーツ中など外傷性に脱臼がおこり、その後、繰り返し脱臼するようになることを反復性肩関節脱臼といいます。肩関節脱臼は整復されると疼痛もなくなり、治ったように思われることが多いですが、実際は肩の前方にある靭帯と関節唇から構成されている制御機構が壊れています。主にこの制御機構により肩が前方へでることを抑えているためこの部分が肩甲骨側の壁から剥がれてしまいそのまま緩むことで肩が繰り返し脱臼するようになります。
反復性肩関節脱臼にならないために最も重要なのは初回脱臼時の治療になります。肩を外旋位に固定することで、剥がれた部分が元の位置に近く戻されて、そこで癒着することにより2度目の脱臼を防止することができる可能性があります。脱臼整復後、すぐ動かし始めたり、三角巾等での固定(内旋位)で経過をみたりするとはがれた部分はそのままとなり、肩の動きや簡単な外力で繰り返し脱臼してしまうようになります。また、初回脱臼のあと、専門的な医療機関で外旋位での固定(専用の装具)での正しい治療をしても再脱臼する可能性はあります。2度目の脱臼をした場合は、普段は肩に問題がなくても前方の靭帯と関節唇は緩んでいることが考えられ、これを脱臼しないように治療するには手術を行う必要があります。
手術は、1cm弱の創を3ヶ所あけて肩関節鏡を用いて行います。肩甲骨の関節面の前方にアンカーをいれてアンカーについている糸を緩んだ靭帯部分と関節唇の剥がれた部分にかけて元の位置に固定します。
術後は4週間の装具の固定を行い、コンタクトスポーツの復帰、オーバーヘッド動作スポーツの復帰は5から6ヶ月かかります。鏡視下手術後の再脱臼率は5~10%ほどあります。

 

術前MRI(靭帯と関節唇が剥がれている)


関節鏡視像(関節唇が剥がれている)

 

剥がれた靭帯と関節唇を縫合

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